耳・鼻・のどの異物についてお話します。

 耳鼻咽喉科の救急疾患の中で、異物症が占める頻度はかなり高いです。多くの症例は生命の危険性に影響を及ぼさないのですが、患者の苦痛や不快感は強いため、いずれの異物においても早急に取り除いた方がよいと思います。

 (耳の異物)は、偶然に耳内に入ったり、自分で入れたり、他人から入れられたり、さまざまなケースがあります。小児の原因では、ビーズ玉、おもちゃのピストル弾、鉛筆の芯、豆、植物の種、消しゴムなどがあります。
 大人では夏季に多いのが小昆虫(蛾、ゴキブリなど)の迷入です。また耳かき中にマッチの棒が折れたり、綿棒の頭がぬけたり、散髪後の髪の毛が外耳道異物となる症例もあります。症状は異物の種類によって多少異なりますが、一般的には、耳内違和感、耳閉感、軽度の聴力低下などです。昆虫が迷入し耳の中で動く場合は、動きまわる音がうるさく聞こえたり、激しい痛みを感じたりします。

 (鼻の異物)は耳の異物とは異なり、偶然に入りこむことはあまりなく、本人か他人が意識的に入れた結果によるのがほとんどのケースです。異物としては、紙、スポンジ、植物の種、小石などさまざまです。2-3歳から小学低学年の児童に多く発生し、本人が鼻に入れたことを自ら訴えたりする場合もありますが、入れたことを忘れていたり、親に知れることを恐れて、長期間隠していたりすることも少なくありません。初期症状は、鼻の痛み、違和感、一側性の鼻づまりがあります。時間が経って炎症をきたすと、異物混入側の鼻腔から悪臭のある鼻だれ(時には血液が混入)が出てきます。親がこの症状に気づき受診する場合も少なくありません。大部分の異物は鼻腔入り口近くにあり、摘出は比較的簡単です。

  (のどの異物)咽頭異物と喉頭異物では症状や生命に影響を及ぼす危険性の大きさがちがうので分けて説明します。


1.咽頭異物で最も多いのは、魚の骨です。
咽頭といっても、刺さった部位、骨の大きさによって症状が多少異なってきます。一般的には、違和感、のどの痛み、時には嚥下時(食物をのみ込む時)に痛みが増強したりします。刺さった部位が検査のしにくい場所であったり、ウナギなどの細い骨だと、捜すのに苦労することも多いので、患者自身が「このあたりが痛い」と指で具体的に示すと、異物を捜し易くなります。

2.喉頭異物は気道狭窄(閉塞)を引き起こす可能性があるため、呼吸困難が最も心配です。耳、鼻、咽頭の異物に比べ、緊急性が高い異物症といえるでしょう。特に、小さなお子さんは何でも口に物を入れたがります。ついさっきまで、何でもなかった子どもが突然、発声困難や呼吸困難になり、前頚部をつかみチアノーゼ(顔面から血の気がなくなり、蒼白から紫色に変化してくる)や苦悶状態を呈する場合は喉頭異物が疑われます。また歯のない高齢者が食物(餅、肉塊など)を十分咀嚼せずに丸のみして、突然、呼吸困難に陥る場合も同じ状態が考えられます。
(治療)いずれの異物であれ、それが疑われる以上、まずは異物を確認し、取り除くことが治療の原則です。患者の状態をよく把握して、喉頭異物のように緊急を要するものなのか、それとも耳、鼻、咽頭の異物のように翌日まで待てるものなのかの状況判断も大切です。

 治療は、まず麻酔なし、或いは簡単な表面麻酔下で慎重に異物摘出を試みます。しかし、摘出が容易でなかったり、患者の苦痛が強い場合、それから小児患者のように摘出への協力が得られにくい場合は全身麻酔下に、摘出術が実行される場合もあります。家庭で異物摘出を試みて、うまくいかなければ耳鼻科医院を受診して下さい。重要な点は、決して強引に摘出を試みようとせずに、無理だと思えば耳鼻咽喉科をたずねて下さい。無理に行った結果、異物がさらに深部に入りこんだり、周辺の正常組織を傷つけ、出血、炎症を引き起こす場合も少なくありません。また、症状が軽くなったからといって必ずしも異物が取り除かれているとは限りません。少しでも気にかかる症状が残っていれば、耳鼻咽喉科で相談したほうが安心でしょう。