自分のお子さんが突然耳の痛みを訴え、耳鼻咽喉科や小児科または夜間、休日であれば救急診療所にかけこんだ経験をもつ親は多いと思います。

 自分で痛みの部位を訴えることのできる2〜3歳以上の幼児だとわかり易いのですが、2歳未満のこどもはただ泣き騒ぐだけで、親もどう対処したらいいのか判断に困る場合があります。

 しかし、その痛みの性質や前後の状況をよく把握することで病気の原因がある程度わかることも多いので、つぎの点に注意してお子さんを観察することが大切です。

 1.風邪をひいていないか
   (鼻水、鼻づまり、咳、痰、発熱、くしゃみなどの有無をチェックする)

 2.痛みがおこる前にプールや海で泳いだり、耳かきをしなかったか

 3.耳の周囲を押すと痛みが強くなるか

 4.痛み以外に症状がないか

 5.ちゃんと聞こえるか

 風邪のあとに、急に強い耳の痛みがおきたら、急性中耳炎が強く疑われます。
高熱をともなっていたら、ほぼ間違いありません。風邪が流行る冬場に多くなります。特に、幼児では激しく転げまわるくらいとても痛がります。患部を冷やし、市販の鎮痛剤をのませてすぐに(時間外であれば翌日)耳鼻咽喉科へ連れていきましょう。

 細菌感染が原因で中耳腔(鼓膜の奥にある間隙で耳管を経て鼻咽腔につながる)に膿がたまり、鼓膜を圧迫するために痛みがおきるもので、膿が耳だれとなって流れ出ると痛みは軽くなります。鼓膜切開による排膿処置が必要になる場合もあります。この病気は、ごくまれに全身状態が悪化し、髄膜炎を引き起こすことがあり、お子さんがぐったりしていたり、高熱が続き、ぼんやりして反応が鈍いなど症状の増悪傾向があれば早急な治療が必要です。耳鼻咽喉科を通じて、小児科に相談が必要になることもあります。

 夏、プールや海で泳いだり、耳あかをかいたあとに耳の痛みがおこれば外耳道炎が疑われます。
 簡単にいえば耳の孔にできたおできとお考え下さい。耳珠(耳の孔の前の部分)を押すと痛みが増強するのが特徴です。程度が軽ければきこえには影響しないこともありますが、程度が重ければ外耳道は脹れて狭くなるためききとりにくくなったり、開口障害(口が開けづらくなる)を引き起こしたりします。耳を冷やしたり、市販の鎮痛薬で様子をみて、早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。

 耳あかがたまりすぎている(耳垢栓塞)場合にも、突然の痛みがおこることがあります。
小さい子の耳かきは決して乱暴に行わず、取り除くことが無理なら、耳鼻咽喉科でとってもらって下さい。耳あかをかきすぎて、傷つけたり、鼓膜を破ったり(外傷性鼓膜穿孔)することもあるので、原因がわからない時は耳鼻咽喉科で診てもらいましょう。
 また、耳を痛がっても中耳炎や外耳道炎をおこす原因が見当たらない時は、耳の中をのぞいて見てください。外耳道異物が発見されることもあります。

 急性中耳炎ほどは痛くないのですが、時々、思い出したように耳の痛みを訴えたり、痛いしぐさをしたりする場合は滲出性中耳炎が疑われます。
 中耳腔に粘液性の分泌物がたまり、鼓膜の動きを制限するため、聞こえの低下を指摘されることがあります。この病気は感染症の膿によるものではなく、全身状態の悪化もあまりありません。聞こえが軽く低下することが唯一の症状であることも多いため、乳幼児では見過ごされている症例が多く、風邪症状でたまたま小児科や耳鼻咽喉科を訪れた際に、初めて病気の存在を指摘される場合もあります。

 きこえのわるさには軽度から中等度までさまざまですが、日常生活で困る程ではないが、返事がおくれたり、頻繁に聞き直すことがあれば一度聴力検査を受けさせた方がよいと思います。急性中耳炎や外耳道炎とちがい、急ぐべき処置は特にありませんが、長期間、放置すると治癒が難しい癒着性中耳炎に進展することもあり、耳鼻咽喉科で定期的に診てもらった方がいいでしょう。

 また、生まれつき耳介のすぐ前に小さなくぼみや孔があり、簡単にいえば、外耳の奇形の一種で、胎児期の耳をつくる段階で何らかの原因により生じたものがあります。普段は押すと乳白色のカス状分泌物(皮脂様物)を出し、多くはなんらの症状もなく終わるのですが、時々脹れて痛む時は、先天性耳瘻孔の可能性があります。
 遺伝性が強く、親兄弟にもしばしばみとめられます。通常は放置してもかまいませんが、患部を押して痛みが激しかったり、膿がでてきたり、細菌感染をくり返すようだと、手術で周辺から取り残しのないよう完全摘出したほうがよい症例もあります。

 最後に、耳が痛いときは耳そのものの病気ばかりでなく、まわりの器官についても痛みの原因がないかどうか疑ってみる必要があります。気になることがあったら迷わず、耳鼻咽喉科医へ相談することが大切です。